サブリミナル効果は記憶に残る?そして広告で用いられる?
クイズです!見せただけで人を操る映像って、あると思いますか?
すごい話ですよね?だけどこの話、けっこう有名みたいなんです!
のみものの売り上げが上がったとか、映画やドラマのネタにもなったとか……。
きになりますよね?それは「サブリミナル効果」っていうんです。
これを宣伝に使ったら、すごいことになりそうですよね?
ろう力を使わずに、簡単に効果のある広告が作れちゃうかもしれません。
みなさんに、そんなサブリミナル効果のことを教えます!
……ふふふ。実はここまでの文章にも、サブリミナル効果を入れていたんですよ。気がつかなかったでしょう?上の文章をタテに読むと「くすのきころみ」になるんです!これで私の記事が読みたくなってきましたよね?
え、ぜんぜんならない?そ、そうですか。たしかにそうかもしれないですね。効果はオカルトっぽいイメージが強くて、本当に有効かどうかも半信半疑だっていう人がほとんどじゃないかと思います。それじゃあ実際のところ、広告としての効果はどれだけあるんでしょうか?
まずは、サブリミナル効果とは何かということを、簡単に説明します。サブリミナル(subliminal)という言葉は、もともと心理学の用語で「識閾(しきいき=認識している領域)下の」とか「潜在意識下の」という意味があります。つまりサブリミナル効果とは、意識することができないレベルの刺激によって、知覚が影響を受けることをいうのです。
この説明だけだと、ちょっと分かりにくいですよね。次の章では、実際にサブリミナル効果が使われた例を紹介しましょう。
サブリミナル効果は、潜在意識や、意識と潜在意識の境界領域に刺激を与えることで表れるとされています。文字のように残らない、視覚や聴覚だけで認識する映像表現や音声・音楽には、サブリミナル効果を用いることができると考えられています。
1.動画のサブリミナル効果
連続した映像情報の速さが1秒あたり画像10コマを超えると、1コマの画像を個別に認識できず、連続した一つの動画として見えるようになっていきます。
例えば、1秒あたり10枚程度の動画に違う画像を1コマだけ混ぜると、何の画像かは分からなくとも、違う画像が混ざっていることには気づく場合が多いです。しかし、これが1秒あたり20コマ、30コマなどの精密な動画では、関係ない画像が1コマ、紛れ込んでいたとしても、混ざっていることに気づけなくなってきます。
つまり、動画でサブリミナル効果を出すためには、見ている人がその存在に気づかない、20コマ、30コマ以上の動画に、伝えたいメッセージの画像を1コマずつ挿入すれば良いということです。
1-1.実際に行われた映画実験
サブリミナル効果の存在を世の中に広く知らしめたのは、1957年にアメリカの広告業者が雑誌に掲載した、とある実験でした。実験が行われたのは、映画が上映されている映画館。その映画では普通のフィルムに混ざって「コーラを飲め」「ポップコーンを食べろ」という1コマのメッセージが繰り返しはさみ込まれていました。このフィルムを見せたところ、コーラの売り上げは57.7パーセント、ポップコーンの売り上げは18.1パーセントも上がったそうです。
しかし、実際のところはその後に行われた再現実験はうまくいかず、実験を発表したジェームズ・ヴィカリー氏はこれが虚構であったと証言しました。それでもこの出来事をきっかけに、サブリミナル効果は「人間を洗脳する恐ろしい手段」として有名になったのです。過去には実際に、サブリミナル効果を利用した広告も作られました。しかしこの効果は広告業者にとっては魅力的でも、消費者には欲しくもないものを買わされてしまうかもしれない厄介な存在です。消費者からの批判が寄せられた日本民間放送連盟は「視聴者が通常、感知し得ない方法によって、なんらかのメッセージの伝達を意図する手法(いわゆるサブリミナル的表現手法)は、公正とはいえず、放送に適さない」という文言を放送基準に定めました。しかしその後も「これはサブリミナル効果じゃないか?」と指摘される映像が放送されることもあり、サブリミナル効果か単なる演出効果かの審議が行われています。
2.音楽のサブリミナル効果
サブリミナル効果は視覚(映像)だけでなく、聴覚にも効果があり、音楽にもサブリミナル効果を持たせることが可能と言われています。音楽に「意識的に知覚できない音量」でマスキングしてサブリミナルメッセージを入れる手法と、メッセージを逆さ言葉にして歌詞に入れるマスキング手法「バックワードマスキング」があると言われています。バックワードマスキング手法では、メッセージは音源を逆回転で再生すると元の言葉になって聞こえます。逆再生すると歌詞とは別のメッセージが聞こえると言うアレですね。ビートルズやエミネム、レッド・ツェッペリン 、アイアン・メイデンなど、多数のアーティストの楽曲が指摘されていますので、興味がある方は調べてみるのも面白いかもしれません。楽曲として演出されたものか、アーティストの遊び心、はたまた黒魔術や悪魔信仰の陰謀説などというオカルト的な説を唱える人もいるようです。
1973年、アメリカでゲームの宣伝にサブリミナル刺激が用いられたことがわかり、大きな問題になりました。その後、アメリカではサブリミナル広告は禁止されました。日本でも1995年に日本放送協会(NHK)が、1999年に日本民間放送連盟(民放各社)が、各々の番組放送基準の中でサブリミナル的表現方法を禁止することを明記し、現在はほとんどの映画やテレビ番組で使用が禁止されています。もし、本当にサブリミナル効果を利用した広告を見た人が、自分では意識できないレベルで影響を受け、無意識のうちにその商品を選んだり、広告で促された通りの行動をとるようになってしまうとしたら?
それはもはや広告ではなく、「洗脳」と言うべきものではないでしょうか。
つまりサブリミナル効果は名前が知られている一方で、効果の真偽については未だにあやふやになっているのです。もちろん、ジェームズ・ヴィカリー氏の発表以降にも検証実験は行われました。2006年にユトレヒト大学が検証実験を行ったところ、映像を見る人がそこに隠れてる商品などをすでに知っていて、好感を持っている場合のみ、サブリミナル広告も効果があるという結果が出ました。その後、この実験を行った大学教授の指導によって、BBC放送が公共の場でもサブリミナル効果が有効なのかを検証する実験が行っています。しかしこの実験では、まったく効果は認められませんでした。
こうした結果を受けて、現状では「サブリミナル効果は必ずしも虚構であるとはいえないものの、広告に使えるほどの効果は認められない」という説が有力だといえそうです。
広告業者にとっては魅力的にも思えるサブリミナル効果ですが、今では使うことが禁止されている上に、使ったとしても期待できるほどの効果は見込めないようです。サブリミナル効果に頼るよりは、多くの人が素敵だと思える広告を作るほうが現実的だといえそうです。
でも……あなたがこの記事を最後まで読んでくれたってことは、もしかしたら私のサブリミナル効果がきいたのかもしれませんね!
え?あれはサブリミナル効果とぜんぜん違うって?た、たしかに……そうかもしれないですね。