アドトラックを知るために必要な全知識まとめ【永久保存版】
目次
- アドトラックとは
- アドトラックの料金
- アドトラックの効果
- アドトラックの種類
- アドトラックの会社
- アドトラックの走行エリア
- アドトラックに対する規制
- アドトラック走行の流れ
- まとめ
1 アドトラックとは
「アドトラック」とは、荷台を広告でラッピングしたトラックのことを指します。「広告宣伝車」「広告トラック」「宣伝カー」「宣伝トラック」などさまざまな呼ばれ方がありますが、一般的には「アドトラック」と呼ばれます。輸送手段としてではなく、もっぱら商品やサービスのプロモーションのためだけに、決まったルートを走行します。
アドトラックは、いわゆる屋外広告(OOH広告)の一種に分類されます。屋外広告(OOH広告)にはさまざまな種類がありますが、「静的な」広告が多く、人の記憶に残りにくいという欠点があります。しかし、アドトラックであれば、派手なイラストや音楽とともに、人通りの多いエリアを動いて回るので、人目を引きやすく、商品やサービスの認知を促すには効果的な広告手法として注目されています。
2 アドトラックの料金
アドトラックの料金は、次の2点によって大きく変化します。
1つ目は、どの工程を業者に委託し、どの工程を自前で行うか、という点です。自分たちでやる範囲を広げれば、当然アドトラック事業者に支払う金額は少なく済みます。反対に、すべてを業者に委託しようとすると、その分高額になります。
2つ目は、どのくらいの期間走行させるか、という点です。多くの場合、アドトラック事業者が保有するトラックをレンタルするかたちになるので、期間が長くなればなるほど、トラックの使用料は高額になります。また、燃料費や駐車場代、人件費も多く必要となるので、当然必要となる金額の総額も高くなります。
以上の内容を踏まえ、アドトラックの料金について、以下で具体的に解説していきましょう。
2-1 アドトラックの料金相場
ここでは、アドトラックを利用する際のトータルの料金相場を知っていただくために、最も一般的な利用パターンでの費用感について紹介します。
まず、前項でも説明したように、アドトラックは走行期間によって金額が変動します。一般的な走行期間は、7日間、14日間、31日間の3パターンです。
この走行期間ごとの相場感としては、以下のようになります(もちろん、事業者によって、また委託する業務の内容によって、金額は大きく変動するので、あくまで目安と考えてください)。
- 7日間:約90〜110万円(税別)
- 14日間:約120〜140万円(税別)
- 31日間:約200〜230万円(税別)
これは、アドトラックをラッピングする広告デザインを自前で用意し、制作と走行を委託する場合の相場感となります。
お分かりいただけるかと思いますが、走行期間は長いほどお得になります。7日間の走行を4回やるのと、31日間の走行を1回行うのでは、前者の方が割高になります。
2-2 アドトラックのデザインにかかる費用
ここからは、アドトラックを使用したプロモーションを行う上で、各工程にそれぞれどの程度の費用が必要となるかについて解説していきます。
まずは、アドトラックの荷台部分にのせる広告物のデザインにかかる費用についてです。この費用は、どんなクリエイティブの広告物をのせるかによって大きく変動します。
詳細は「4-2広告のクリエイティブによる分類」で解説しますが、アドトラックには、最も一般的な画像やイラスト中心の広告物から、動画を流すディスプレイ、巨大フィギュアなど、さまざまクリエイティブの広告物をのせることができます。
当然、何をのせるかによって、広告物のデザインにかかる費用は大きく異なりますが、画像やイラスト中心の広告物の場合を例にとると、自前で広告デザインを用意し、アドトラック事業者に入稿するかたちをとるのが一般的です。この場合、広告デザイン費として費用が発生することはありません。
巨大フィギュアなど特殊な広告物をのせたい、社内に広告デザインを用意するリソースが無いなど、自前で広告デザインを用意するのが難しい場合は、広告デザイン会社に相談することをお勧めします。広告のデザインから請け負っているアドトラック事業者に依頼することもできますが、デザイン専門の会社に相談した方がクオリティは高いです。
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2-3 アドトラックの制作にかかる費用
次に、アドトラックの制作にかかる費用について説明します。
まず、前項で紹介した、最も一般的な画像やイラスト中心の広告物の場合。この場合、通常はトラックの荷台部分に広告を印刷したシートをかぶせ、アドトラックを制作します。したがって、大きな車両を使用すると、それだけ大きなシートが必要になります。
そのため、どのサイズの車種を使用するかによって、費用が変わります。たとえば、一般的に使用されるトラックの中では最大級の「4トン超超ロングトラック」の場合、シートにかかるコストは、50万円程度になります。
このシートのコストに、関わるスタッフの人件費などが加わります。人件費などは、色校正にどの程度の工数が発生するかによって増減します。
色校正とは、トラックの荷台にシートを貼り付けた際に、どんな見え方になるのか、実際の色味を事前に確認することをいいます。実際に使用するシートの縮小版に広告デザインを印刷し、確認しながら手直しを加えていく作業です。
2-4 アドトラックを走行させるためにかかる費用
実際にアドトラックの走行にあたって、どの程度の費用がかかるのでしょうか。
たとえば、東京都内を7日間の走行するケースでは、約15〜18万円ほどのコストがかかります。
内訳としては、以下のような構成になります。
- ドライバー採用・人件費:約12〜15万円
- 道路使用許可:約2万円
- 高速道路運行費:〜1万円程度
- 駐車場代:~1万円程度
2-5 アドトラックをレンタルする場合の費用
デザインや制作をすべて自前で行う前提で、アドトラックのレンタルだけを行うとすると、どの程度の料金で車体をレンタルすることができるのでしょうか。
アドトラックのレンタル費用は、車種と期間によって決まります。事業者によって金額に幅はありますが、おおよそ下記のような費用感となる場合が多いです。
- 4トン超超ロングトラック:約20~35万円/7日間
- 4トンロングトラック:約15~25万円/7日間
- 2トンロングトラック:約10~20万円/7日間
- 軽トラ:約5~10万円/7日間
レンタルだけのサービスを設定している業者は確かにあります。しかし、まったくの素人が、トラックのレンタルだけをして、イチからアドトラックをつくり走行させるというのは、現実的ではありません。
実際、こうしたレンタルだけのサービスの利用者の多くは、ほかのアドトラック業者になります。繁忙期などで、自社で保有しているアドトラックが不足したときに、車体をレンタルすることが多いようです。
2-6 アドトラックを購入する場合の価格
数年にわたって、継続してアドトラックでプロモーションを行いたい場合、アドトラックを購入してしまった方が安く済むかもしれません。その場合、どの程度の金額で購入することができるのでしょうか。
自社のプロモーション目的で購入するのであれば、中古車をお勧めします。中古の販売額は、サイズ、メーカー、走行距離によって大きく変化しますが、おおよそ以下の金額を上限と考えてください。
- 4トン級:~300万円程度
- 2トン級:~200万円程度
- 1トン級以下:~100万円程度
- アドワーゲン:~100万円程度
ただ、実際に自社でアドトラックを購入し、走行させるのは簡単ではありません。特に3トン以上のトラックでのプロモーションを考える場合、免許を持っているドライバーの採用や、専用の駐車場の手配、走行ルートの確保などのハードルが上がるうえ、燃料費や維持費も高くなります。
3 アドトラックの効果
アドトラックを使ったプロモーションには、どのような効果があるのでしょうか。
ほかのプロモーション手法と比較した際の特徴としては、下記のような点を挙げることができます。
- プロモーションしたい地域を自由に選択できる
- プロモーションの強化時間帯を調節できる
- 地域密着型のプロモーションを行うことができる
それではアドトラックの効果について、各特徴とともに、具体的に説明しましょう。
1. プロモーションしたい地域を自由に選択できる
屋外広告の一種であるアドトラックの最大の特徴は、移動が可能である、という点です。屋外広告のなかでもより一般的な屋上広告や懸垂幕、飛び出し看板など静的な広告手法とは一線を画し、みずから、プロモーション活動を行う地域や時間帯を、その時々の状況に応じて決めることができます。宣伝活動のオケージョンを人為的に、効果的に、移動しつつ決めることができるということは、プロモーションする側にとっては宣伝費のコスト削減になりますし、宣伝を受け取る側の人々にとっても、自分と関係のない、余計な広告を浴びる可能性が減るので、騒々しさから解放されるメリットがあります。
2. プロモーションの強化時間帯を調節できる
プロモーションを行ううえで、ターゲットとなる人々の活動時間帯は、年齢や性別、職業などによって大きく異なります。したがって、効果を最大化するためには、商品・サービスが目指すターゲットとなる人々のライフスタイルを熟知し、それに合わせた時間帯にプロモーションを行う必要があります。
たとえば、「新宿」という街では、昼間と夕方、夜間で、それぞれ歩行している人の種類が異なります。昼間は、定年退職した夫婦や、打ち合わせのために訪れたビジネスマン、外国人観光客などが多いですが、夕方は高校生や大学生が中心となり、夜間になると夜の仕事に従事する20~30代や、仕事帰りに飲み歩くようなサラリーマンたちが闊歩します。
一日中ずっと掲出を行う屋外広告とは異なり、アドトラックは、ターゲットとなる人の活動時間帯に合わせてプロモーションを行うことができるので、ずっと効率よく認知を広げることができるのです。
3. 地域密着型のプロモーションを行うことができる
たとえば、豊洲と池袋と丸ノ内では、街を歩いている人々のライフスタイルや所得水準、家族構成、職業、趣味などの傾向はまったく異なります。しかし、マスメディアによる地域広告では、せいぜい都道府県別にセクションを区切ることが限界です。これでは、効率よく認知を広げることはできません。
アドトラックの場合、街単位でプロモーションを行うことが可能です。たとえば、新作アニメのプロモーションを行いたい場合、秋葉原や池袋でアドトラックを走らせれば、より効率よく認知を広げることができます。
3-1 アドトラックと他の屋外広告の比較
屋外広告には、屋上広告や壁面広告、懸垂幕、飛び出し看板、張り紙、弾幕など、さまざまな形態があります。これらの広告と比較したとき、アドトラックを使ったプロモーションにはどのような特徴があるのでしょうか。
1つは、アドトラックは移動させることができFるという点です。屋外広告で移動できるものは少なく、どうしても万人向けの広告が多くなります。その点、前項でも説明したように、アドトラックはターゲットとなる人が多い街で、ターゲットとなる人が多い時間帯にプロモーションすることができます。
2つ目は、注目されやすく記憶に残りやすいという点。屋外広告の多くはテレビCMのような動きはないので注目を集めにくく、記憶に残りにくいという欠点があります。アドトラックの場合、派手な音楽や照明、イラストや目を引く画像、ときには動画やフィギュアなどをのせることで、通り過ぎるだけで目で追ってしまうような仕組みになっています。
3つ目は、安価であるという点。屋外広告で注目を集めやすく、記憶に残りやすい媒体として、デジタルサイネージなどが挙げられますが、掲出できる場所は限定的で、しかも非常に高価です。デジタルサイネージに出稿する場合と比較すると、アドトラックを使ったプロモーションは費用対効果に優れます。
3-2 アドトラックの効果の計測方法
アドトラックを使ったプロモーションの効果を測定する方法はあるのでしょうか。どのような手法が用いられているのでしょうか。
通常、屋外広告の場合、掲出する場所の通行人数をもとに、その広告が何人の目に触れたかを計算し、効果を計測します。デジタルサイネージなどの場合は、この数によって金額が決められることもあります。
しかし、アドトラックの場合はどうでしょう。
常に動き回っているアドトラックでは、そのエリアの通行人の数を正確に把握することは難しく、実際に広告が何人の目に触れたかを概算するのは困難です。
そこで、アドトラックの場合は、何人の目に触れたかではなく、アドトラックを使ったプロモーションが成功だったか失敗だったかを基準に効果測定する手法をとることが多いです。
たとえば、アドトラックの広告物に、「●●で検索!」と表記したり、「●●で検索!」というフレーズの入った音楽を流したりします。そのうえで、アドトラックを走らせる前と走らせている間で、検索エンジンでそのキーワードが検索される数を比較するのです。実際に何人のユーザが、アドトラックを見ることによって行動したかを把握することができます。
注意点は、同時にテレビCMなどを打たないこと。ほかのプロモーションを同時に行ってしまうと、ユーザが動いたことを確認できたとしても、どの広告の成果なのかが見えにくくなってしまいます。
4 アドトラックの種類
実際にアドトラックを走らせる際には、プロモーションする商品やサービスのタイプ、ターゲットとなる人の属性などによって、最適な種類のアドトラックを選ぶべきです。そのためには、まず、アドトラックにはどのような種類があるのかを知る必要があるでしょう。ここでは、アドトラックの種類について解説します。
4-1 車種による分類
アドトラックに使用するトラックの車種は、大きく積載トン数によって分類されます。どのエリアをどのように走らせるか、またどのような広告物をのせるかによって、最適な車種は異なります。以下で詳細を解説していきます。
4-1-1 40Fトレーラー
トレーラーとは、荷台を滑車で連結し、その荷台を動力がそなえられた車によって引っ張る車体を呼びます。なかでも40Fトレーラーは、40フィートの巨大な荷台に広告シートを貼り付けて走行します。現在、日本で取り扱われているアドトラックのうち、車体も広告面も最大級の大きさを誇ります。費用はかさみますが、歩行者に与えるインパクトは大きく、期待できるプロモーション効果も高いです。
広告面積は幅12,000ミリ、高さ2,400ミリ。1サイズ小さい、10トントラックや4トン超超ロングトラックとは、約4メートルも幅に差があります。たった4メートルでも、体感の印象はまったく異なり「大きいなあ」と大迫力におののくはずです。40Fトレーラーが街中を走っている姿は圧巻ですよ。
ただし、かなり高額となるので、街中で見かける機会はそれほど多くないかもしれません。最近では、渋谷などで、水樹奈々さんのプロモーションをしていたアドトラックが40Fトレーラーでしたが、私自身、それ以外は見かけた記憶がありません。
4-1-2 10トントラック
10トントラックは、トレーラーを除くアドトラックの中では最大のサイズとなり、大型車に分類されます。ただし、広告面積は、後述する4トン超超ロングトラックと同じサイズしかありません。にもかかわらず4トン超超ロングトラックより高額となるのが普通です。というわけで、業界人からすれば、アドトラックとしてはあまりおすすめできない車種となります。
運送業界では、積載量によってトラックの機能が判断されます。運送に際しては、荷台にどのくらい詰めこむことができるのかが重要ですから。しかし、アドトラックでは、荷台には広告物に使う備品以外に何も積みません。したがって、積載量についてはあまり気にする必要がないのです。重要なのは広告面積です。
4-1-3 4トン超超ロング(おばけロング)トラック
4トン超超ロングトラックは、アドトラック用に新しく規格された新種のトラックです。個人的には、最もおすすめしたい車体です。広告面積はメーカーによって多少異なりますが、おおよそ以下のようなサイズになります。
- ボディ面: 幅9,505ミリ 高さ2,365ミリ
- スカート面: 幅9,865ミリ 高さ650ミリ
ボディ面とは、トラックの荷台の側面のうち、もっとも広い部分を指します。一方、スカート面は、ボディ面の下部、タイヤと同じくらいの高さにあり、歩行者の視界に入りやすい箇所です。
4トン超超ロングトラックが登場する前、40Fトラックを除くアドトラックの中では、前述の10トントラックが最大の広告面積をもつ車体でした。しかし、10トントラックは大型車となるので、走ることのできない道路が多かったり、大型免許を持つドライバーの採用が難しかったりするなど、アドトラックとして運用するには障壁が多すぎたのです。
そこで新規開発されたのが、4トン超超トングトラックでした。業界では『おばけロング』などと通称されることもあります。10トントラックと同じ広告面積を持つにもかかわらず、中型車に分類される車種です。
4-1-4 4トンスーパーロングトラック
アドトラックとしてはあまり一般的ではないサイズで、街中で見かけることも少ないです。広告面積は以下のようになっています。
- ボディ: 幅9,130ミリ 高さ2,270ミリ
- スカート: 幅9,385ミリ 高さ645ミリ
4-1-5 4トンロングトラック
4トン超超ロングトラックが登場する前、最もポピュラーだった車種ですが、現在でも見かけることがあります。ただし、最近は4トン超超ロングトラックも、ほぼ同じ金額で走行させることができるので、一般的に使用されるケースは減ってきています。
4-1-6 4トントラック
4トン級の中では最も広告面積の小さい車種です。4トンスーパーロングトラック、4トンロングトラックと同様、金額にそこまで大きな差はない場合が多いせいか、4トン超超ロングトラックを選択されることの方が圧倒的に増えました。広告面積は以下です。
- ボディ: 幅7,840ミリ 高さ2,460ミリ
- スカート: 幅8,505ミリ 高さ590ミリ
4-1-7 3トンロングトラック
アドトラックとしてはあまり一般的ではない車種です。少なくとも私は街中で見かけたことはありません。金額はあまり変わらず、広告効果が小さいため、アドトラックとしてはお勧めできない車種です。
4-1-8 2トンロングトラック
アドトラックとしてはあまり一般的ではない車種です。こちらもほとんど見かけることはないでしょう。広告面積は以下。
- ボディ: 幅3,970ミリ 高さ1,730ミリ
- スカート: なし
4-1-9 2トントラック
個人的に、4トン超超ロングトラックの次におすすめできる車種です。この車種は、普通車に分類されるため、住宅地などの小さな道路も走行することができます。また、ドライバー採用のハードルも低く、走行の際の人件費も安く済みます。4トン級のトラックと比較して、総額で20~30万円ほど安く走行させることができます。広告面積は以下。
- ボディ: 幅2,920ミリ 高さ1,860ミリ
- スカート: なし
4-1-10 軽トラ
広告の掲出方法がほかのアドトラックと異なるのが軽トラを使ったアドトラックです。荷台を装飾するのではなく、「荷台に看板を乗せる」ような形式をとる場合が多いです。アルミ複合板や電飾シートで作られた看板を、荷台のまんなかにドンと乗せるような感じです。簡素な掲出にはなりますが、新宿などでも走っている姿をときどき見かけます。1日あたり10万円を切る金額で走行させることも可能です。
広告板の面積は以下が標準です。
- 幅1,860ミリ 高さ1,000ミリ
4-1-11 アドワーゲン
アドワーゲンは、とにかく見た目の可愛さが強みです。トラックのように広告面でプロモーションをするのではなく、見ていて安心感のある雰囲気を出しながら走るのが目的です。広告面積は以下。
- 幅 2,465ミリ 高さ1,280ミリ
4-1-12 エコトラック
エコトラックは、最近、新しく登場したモデルです。アドトラックの走行には、どうしても排気ガスの問題がつきもので、苦情が寄せられることもあります。そこで大気汚染などの環境問題に配慮している旨を、プロモーション活動の一環として歩行者に伝えたい場合に、エコトラックをお勧めしています。荷台の広告面には「CO2に配慮しています」などの文言がかならず記載されており、クリーンなイメージを訴求することができます。
4-1-13 LEDビジョントラック
映像データをボディ面で流すことができるのが、LEDビジョントラックです。AKB48やアイドルマスターなど、オタク系の商品・サービスの宣伝に使用されているケースが多く、街中で見たことがある方も多いでしょう。一般的に、4トン級のトラックで装備されていることが多いです。
4-2 広告のクリエイティブによる分類
ひとくちにアドトラックと呼ばれますが、その宣伝手法は多様です。商品・サービスに応じて、もしくはターゲットユーザーの趣向や行動様式に合わせて、幅の広いクリエイティブが行われています。
4-2-1 イラスト・画像
最も一般的で人気のある広告物は、荷台にイラストや画像を印刷したシートを被せたものです。シートは、屋外広告ではよく用いられる「FFシート」や「ターポリン」を使用します。
FFシートは、光の透過度が高く、表面がなめらかです。また骨材が入っているため、テンションもあります。一方ターポリンは、もともと船の帆などに用いられている生地のため、骨材が弱いものが多いです。看板などの使用を想定して作られていないため、表面に凸凹があります。個人的には、FFシートをお勧めすることの方が多いです。シートの印刷は、専門の工場で数日かけて行います。
4-2-2 巨大フィギュア
2016年6月1日に全国ロードショーした映画「DEADPOOL」では、全長7メートルの巨大フィギュアをアドトラックに積載し、東京、名古屋、京阪神を走行しました。
天上天下唯我独尊ジャイアントデップーちゃんプリケツウルトラセクシー ❤ ニルヴァーナサガットステージアドトラックで、俺ちゃんラバーズに艶姿を見せつけたり https://t.co/0UUJfYaLWl #デップー発見 #デッドプール pic.twitter.com/hF9gpY8rM3
— 映画『デッドプール』 (@DeadpoolMovieJP) 2016年10月21日
このように、映画やアニメなどのプロモーションの際に採用されることが増えているのが、荷台に巨大フィギュアを積載するタイプの広告物です。シートにイラストや画像を印刷するタイプに比べ、明らかに派手で特徴的な外見の広告物となるため、見た人にSNSでシェアされやすいのが特徴です。
4-2-3 ショーケース
アドトラックの荷台をショーケースに加工し、中にフィギュアなどを立てて走行するアイデアも実施されています。2012年10月20日より公開した劇場版アニメ『マクロスFB7 銀河流魂 オレノウタヲキケ!』のプロモーションでは、2体の巨大フィギュアをショーケースに格納し、街を走行しました。
4-2-4 動画
LEDモニターがボディ面に搭載されているトラックを用いたプロモーションとなります。注意点として、映像を流すことができるのは停車時のみで、映像を流しながら走ることはできません(道路交通法の禁止事項に該当します)。そのため走行中は、静止画に切り替えながら街中を走るケースが多いです。具体的な事例としては、ベネッセコーポレーションの「BenePa」や、アーティストの新曲ミュージックビデオを流す案件などが挙げられます。
4-2-5 音楽
アドトラックに外せないのが音楽です。イラストや動画など目で見る広告物とセットで、音楽や音声を使用することが多いです。耳に残る音源を用意できれば、「中毒性がある」と話題になることもあります。代表的な例としては、高収入求人情報「バニラ」の音源です。いまでは新曲となるたびに、キュレーションメディアに取り上げられるなどして、大きな反響があります。「耳にこびりついて離れない」「バニラが通ると、周りの音が聞こえなくなる」などの声が上がっています。
5 アドトラック事業を行う会社
アドトラックに関連する事業を展開している企業には、さまざまな種類があります。無駄な出費を避け効率的にプロモーションを行うには、どのような業態の企業に相談するのが最適か知っておく必要があります。以下で詳細に解説しましょう。
5-1 ワンストップ型 アドトラック事業会社
「ワンストップ型」というのは、広告物のデザインから、アドトラックの制作、走行まで一気通貫で対応してくれる会社のことを指します。この種の会社は、そう多くはありません。
「デザイン、制作、走行まですべて対応します」と謳っていても、実際にはデザイン部分を広告制作会社に丸投げしていることが多く、デザインの修正対応などに必要以上の時間がかかったり、余分に費用が発生していたりする可能性があります。社内に常駐しているスタッフでどこまで対応できるのか、という観点で判断することをお勧めします。
また、広告物となるイラストにアイドルやキャラクター、商品やサービスのロゴなどを使用したい場合、また、プロモーション対象のアーティストの楽曲を音源に使用したい場合などは、もととなる素材を既に持っているため、デザインや音源は自前で手配する方が手っ取り早いというケースがあります。
5-2 広告デザイン・制作型 アドトラック事業会社
広告制作会社のうち、アドトラック向けの広告物の制作実績がある会社は、この部類に該当します。デザインを専門としている会社がほとんどなので、希望に合わせてさまざまなタッチのデザインを提案してくれます。自社でアドトラック用の広告デザインを作れない場合は相談してみると良いでしょう。
5-3 アドトラック制作販売会社
お客様の希望を聞き、カスタマイズでアドトラックを制作して販売する会社です。このタイプの会社は、中古車販売や、車の改造を本業としている会社が多く、アドトラックに特化しているというわけではないことが多いです。購入することを前提とするのであれば、あたってみるべきでしょう。
5-4 アドトラック制作・走行会社
広告主が持ち込んだデザインをもとにアドトラックを制作し、走行させる会社です。もっとも一般的な形態で、「アドトラック」を謳っている会社のほとんどはこのビジネスモデルをとっています。広告主がクライアントとなって直接取り引きを行う場合が多く、広告主側の事情に理解がある会社が多いです。
5-5 レンタル型 アドトラック事業会社
アドトラックとして使える車種のトラックやトレーラーを保有し、レンタカーとして貸し出す形のビジネスを展開している会社です。クライアントは、ほかのアドトラック事業者やイベント会社、PR会社などが中心で、広告主と直接取り引きすることはほとんどないです。アドトラックの制作や走行もセットで請け負っている企業もあります。
5-6 広告代理店型 アドトラック事業会社
アドトラック案件をあつかう広告代理店が、ここに分類されます。この手の会社は、あくまで広告代理店なので、自社でアドトラックを保有していたり、アドトラックを走行させたりすることはありません。ファッションブランドなどが、プロモーション戦略の一環として、テレビCMや雑誌広告、インターネット広告などとあわせて、アドトラックによるプロモーションを行う場合など、広告代理店やPR会社を経由する場合があります。
6 アドトラックの走行エリア
アドトラックを使って商品やサービスをプロモーションしようする場合、どの街を走らせるかによって、プロモーション効果はまったく変わります。これは、街によって集まる人の属性はまったく異なるうえ、ターゲットとなる属性の人が集まっている街で走行させなければ、人の記憶に残りにくいからです。
では、あなたのプロモーションはどの街で行うのが最適なのでしょうか。ここでは、アドトラックがよく走る街と、その街でプロモーションするのに最適な商材について紹介します。
6-1 北海道・東北エリア
北海道と東北地方では、そもそも一般的にアドトラックが走っている街は、そう多くありません。
6-1-1 札幌(北海道)のアドトラック
札幌は北海道経済の中心都市です。そのため、北海道ローカルの商品やスポーツチームのプロモーションを行うアドトラックが多いです。また、日本三大歓楽街の1つにも挙げられるすすきのエリアを抱えているせいか、飲食や風俗業界の求人媒体のアドトラックも多く見られます。そのほか、全国区でのプロモーションを狙うアーティストやアイドルグループなどのアドトラックも多いと言えます。
6-1-2 仙台(宮城県)のアドトラック
仙台を走るアドトラックも、札幌同様、東北地方のスポーツチームなどのアドトラックが多い印象があります。実のところ、これはどの地方都市にも共通してみられる傾向で、地域に根差したプロモーションができるという、アドトラックの強みでもあります。全国区でのプロモーションを狙うアーティストやアイドルグループのアドトラックも多いです。
6-2 関東甲信越エリア
もっともアドトラックが多く走るエリアです。特に東京はアドトラック激戦区で、多くの街で日常的に複数のアドトラックが走る姿が見られます。
6-2-1 新宿(東京都)のアドトラック
新宿を走るアドトラックの特徴は、やはり飲食や風俗業などの求人媒体。歌舞伎町という日本最大級の歓楽街を抱える新宿ならではです。また、渋谷や池袋と比較すると、若干年齢の高い層を狙ったアドトラックが多い印象があります。
6-2-2 渋谷(東京都)のアドトラック
渋谷を走るアドトラックの特徴は、音楽アーティストが多いことです。特に、ビジュアル系バンドやEXILE系グループ、韓流アイドルなどのアドトラックは、かなりの頻度で目にすることができます。総じて10代~20代をターゲットとしている印象があり、アドトラック業界では「渋谷=若者の街」の定説は崩れていません。
6-2-3 秋葉原(東京都)のアドトラック
秋葉原を走るアドトラックの特徴は、なんといってもアニメやマンガ、アイドルグループなど、いわゆるサブカル系商材が多いということ。もはや取り立てて説明する必要もないでしょう。そのほかでは、電気街があることからギーク系のオタクが集まりやすいということで、Googleがアドトラックを走らせていたことがありました。
6-2-4 池袋(東京都)のアドトラック
池袋を走るアドトラックの特徴は、秋葉原と同様、サブカル系商材が多いということです。秋葉原との違いを挙げるなら、秋葉原が30~40代を中心のターゲット層としているのに対し、池袋のサブカル系商材は明らかに10代~20代前半の層をターゲットとしているという点です。
6-2-5 銀座(東京都)のアドトラック
銀座を走るアドトラックの特徴は、時おりファッションブランドや雑貨チェーンなどのアドトラックが見られるということ。この手のアドトラックは、ほかのエリアではごく稀です。また、アイドルグループや映画、マッチングアプリ、パチンコ店などのアドトラックもよく見られますが、これはどの街でも多い商材です。サブカル系、オタク系の商材のアドトラックはかなり少ないです。
6-2-6 豊洲(東京都)のアドトラック
豊洲エリアは、そもそもアドトラックが日常的に走っている街ではありませんが、ときどきジャニーズなどのアイドルグループのアドトラックが走ります。休日には子連れファミリーが大挙して押し寄せるので、子持ちママ向けの商材などはウケがいいかもしれませんね。
6-2-7 丸の内(東京都)のアドトラック
丸の内を走るアドトラックの特徴としては、銀座のそれに近いです。ただ、銀座ほど日常的にアドトラックが走ることはなく、歩いていてもアドトラックを見かけることは稀です。街を歩いている人の属性としては、30代の働く女性が多く、特に夜になると30代独身の男女が多くなります。
6-2-8 六本木(東京都)のアドトラック
六本木を走るアドトラックの特徴としては、キャバクラやガールズバーなど飲食業の求人や新規オープンの告知をするアドトラックです。アーティストのアドトラックもよく走っていますが、アイドルグループなどは少ない印象です。
6-2-9 川口(埼玉県)のアドトラック
川口を走るアドトラックの特徴は、オートレースのアドトラックがよく走っているということ。これは、川口市内にオートレース場があるためです。そのほか、パチンコ店などのアドトラックも見られます。
6-2-10 千葉(千葉県)のアドトラック
千葉を走るアドトラックには、特にこれといった特徴は見られません。アイドルグループやアーティスト、パチンコ店、求人媒体などのアドトラックが多い印象です。
6-2-11 横浜(神奈川県)のアドトラック
横浜を走るアドトラックにも、特にこれといった特徴はないでしょう。アイドルグループやアーティスト、パチンコ店、求人媒体などのアドトラックが多い印象です。
6-3 東海エリア
東海地区で日常的にアドトラックが走る街といえば名古屋。それ以外の都市では、アドトラックを目にすることは多くありません。
6-3-1 名古屋(愛知県)のアドトラック
名古屋市内を走るアドトラックの特徴としては、札幌や仙台と同じく、地元ローカルのスポーツチームなどに関連したプロモーションが見られることです。そのほか、アイドルグループやパチンコ店、スマートフォンゲームなどのアドトラックが多いですが、特にほかの街と異なる点は見られません。
6-4 関西エリア
関西地方では、やはり大阪市内を走るアドトラックが最も多く、次いで京都市内、神戸市内が続きます。とはいえ、大阪以外では、首都圏の街ほど頻繁にアドトラックを見られるということはなく、ほかの地方都市と同程度の市場規模になります。
6-4-1 梅田(大阪府)のアドトラック
梅田といえば、西日本では最も多くの人が集まる街のひとつとして知られています。そのため、梅田を走るアドトラックは、日本全国の各都市で同時にプロモーションを行うアーティストや映画、アイドルグループなどのアドトラックが多く、この状況は、札幌や仙台、名古屋、福岡などとまったく同じと言えます。
6-4-2 京都(京都府)のアドトラック
京都を走るアドトラックには、特にこれといった特徴は見られません。アイドルグループやアーティスト、パチンコ店、求人媒体などのアドトラックが多い印象です。
6-5 中国・四国エリア
中国・四国地方では、日常的にアドトラックが走る街はほぼ無いと言ってよい状態です。一部の都市部でのみ、稀にアドトラックが走っていることがある、という程度です。
6-5-1 岡山(岡山県)のアドトラック
岡山市内を走るアドトラックには、特にこれといった特徴は見られません。アイドルグループやアーティスト、パチンコ店、求人媒体などのアドトラックが多い印象です。
6-5-2 広島(広島県)のアドトラック
広島市内を走るアドトラックにも、特にこれといった特徴は見られません。アイドルグループやアーティスト、パチンコ店、求人媒体などのアドトラックが多い印象です。
6-6 九州・沖縄エリア
九州・沖縄地方でも、ほかの地方圏と同様、日常的にアドトラックが走っている街はごく一部に限られています。
6-6-1 福岡(福岡県)のアドトラック
福岡を走るアドトラックの特徴は、本全国の各都市で同時にプロモーションを行うアーティストや映画、アイドルグループなどのプロモーションが多い、という点です。この状況は、札幌や仙台、名古屋、梅田などとまったく同じです。そのほかの特徴として、海外旅行・観光関連のアドトラックを目にすることが多いです。また福岡ローカルのスポーツチームを用いたアドトラックも多く見られます。
6-6-2 沖縄県のアドトラック
沖縄県は、長らく“大型アドトラック空白地帯”とされていました。それは、あの大きなトラックの車体を離島である沖縄県まで運ぶには、かなりのコストがかかってしまうからです。沖縄県で走っているアドトラックの主流は、2トン級以下の車種のものが中心です。日本全国、あるいは世界中から集まる観光客をターゲットにしている場合が多く、商材は他エリアのそれとは大きく異なります。
6-7 海外
日本以外でも、アドトラックを用いたプロモーションは徐々に浸透してきていますが、日本ほど、市場として成熟している国はほかにありません。特に西欧諸国などでは、道路交通に関する規制が厳しい場合が多いとされているのも、一因かもしれません。アドトラックは、クリエイティビティ(創造性)がモノを言う領域なので、日本のお家芸的な側面もあるかもしれませんね。
7 アドトラックに対する規制
派手な見た目や音楽を流しながら走るアドトラック。ときに、騒音や公序良俗に対する懸念などについて、問題視されることがあります。そもそも商品やサービスについて興味を持ってもらうことを目的にアドトラックを走らせているのですから、嫌悪感を持たれてしまっては元も子もないでしょう。
そうした事態を可能な限り少なくできるよう、アドトラックを走行させるときは正しく運用する必要があります。ここでは、基本的におさえておくべき法律や条例、ルールについて紹介しましょう。
7-1 アドトラックによる騒音問題
アドトラックが街中で流す音楽の音量は、非常に大きいです。従って、中には不快に思う歩行者もいるということを認識しましょう。なお、騒音は、「騒音規制法」という法律によって規制が行われていますが、アドトラックから流れる大音量は、基本的に規制の対象外となる場合が多いです。
関連リンク
騒音規制法の概要|環境省
もともと騒音規制法は、日本がまだ高度経済成長だった時代に、爆発的に車が増えたことによって施行されました。当時はまだ車の性能がよくなかったため、騒音問題に発展しましたが、車の性能が向上した現代では、とくに問題とは認識されなくなりました。なお現在、とくに規制対象とりやすいケースとしては、拡声器などを用いて演説などを行う場合などがあります。
7-2 アドトラックに関連する法律
まず、アドトラックに関連する基本的な法律として、以下の3つの法律をおさえておきましょう。
- 道路交通法
- 車両法
- 屋外広告物制度
関連リンク
道路交通法(抜粋)|警視庁
道路運送車両の保安基準|国土交通省
屋外広告鵜物制度の概要|国土交通省
7-2-1 道路交通法 第77条(道路使用許可)
アドトラックが街中を走行するためには、「道路使用許可」を取得する必要があります。所轄の警察署に申請をすることで、取得することができます。ただし、たとえば東京都の場合、公益社団法人東京屋外広告協会が発行する「車体利用広告等デザイン審査済証」が必要となるなど、自治体によって個別の条例を設けている場合があるので注意が必要です。
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道路使用許可の概要、申請手続等|警視庁
7-2-2 著作権法
広告制作の際に、絶対に注意しなければならない法律として、著作権法が存在します。掲出する静止画や動画、また走行中に流す音源について、細心の注意が必要です。オリジナルで制作を行う場合や、著作権フリーの素材を使う場合には、とくに問題は生じにくいですが、たとえばJASRACに申請が必要な著作物に触れる場合、かならず著作権購入を行う必要があるなど細かな規定があります。
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著作権の概要|一般社団法人日本音楽著作権協会JASRAC
7-2-3 民法 第90条(社会的妥当性)
民法には、公序良俗に関する条文が存在します。社会における一般的な秩序や、一般的な道徳的観念・社会通念に反するような法律行為は、無効となる、という主旨です。たとえば、暴利行為や性的不倫契約などは、社会的妥当性に欠けるため、宣伝を行うことができません。常識的に考えて、まずいことを宣伝しないかぎりは、とくに問題にならないのですが、念頭に置いておくことでトラブルを防ぐことができます。
7-2-4 民法 第709条(肖像権)
肖像権とは、個人の肖像を他人に使わせない人格的権利を指します。たとえば、関係者まで許可を取らずに、芸能人の顔写真などを商品・サービスの宣伝に使用することは、肖像権侵害ですから、不法行為です。民法第709条によって、不法行為として賠償責任を負います。
7-3 アドトラックに関する条例
アドトラックを走行させるうえでは、走らせる自治体で施行されている条例も確認しておく必要があります。場合によっては、所定の手続きを踏まなければ走行させることができない可能性があるので、念入りに確認しておきましょう。
7-3-1 屋外広告物条例施行規則(東京屋外広告協会による審査)
たとえば東京都では、「良好な景観の形成、風致の維持、公衆への危害防止を目的」として、東京都屋外広告物条例及び同施行規則とした規制が制定されています。
関連リンク
屋外広告物|東京都都市整備局
東京都にかぎらず、各都道府県・政令指定都市・中核都市では、屋外広告物法に基づいた条例をそれぞれ定めています。東京都の場合は、所定の書類を作成し、提出しなければなりません。
これらの手続きを自分たちで行うには限界があります。このあたりの手続きについては、アドトラック事業者は慣れていることが多いので、まずは相談してみることをお勧めします。
8 アドトラック走行までの流れ
ここまでアドトラックの広告特徴や現在の環境を説明してきました。ここでは、現在、業界でおもに取られている発注の手続きから、制作、トラックの手配、実際の走行まで、各フローの概要をステップごとに説明します。あわせて、円滑にフローを進めるために気を付けるべきことなども、まとめました。ご覧ください。
8-1 問い合わせ・見積り
最初にすべきことは、数社に問い合わせることです。検索エンジンから探せば、現在アドトラック事業を展開しているおもだった企業が見つかります。それぞれ特徴がありますから、どのような業態で、どのようなサービスを提供しているのか、費用感はどれほどになりそうか、調査しましょう。
いくつか企業をリストアップしたら、かならず数社に見積もりを出してもらってください。企業によってコストはピンキリですから、扱っているトラックの車種や提供しているサービスをよく確認し、比較検討しましょう。
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アドトラックのお見積り方法
8-2 申し込み
各事業者側から見積もりを出してもらったら、申し込みの手続きを取ります。
もしあなたが「1カ月くらいアドトラックを試したいなあと考えています」とか「4トントラックで宣伝したいんですけど」などと、曖昧にイメージを伝え見積もりを出してもらっている場合には注意が必要です。問い合わせの時点で情報が少なすぎる場合、都合よく(不当に安く)見積書を作成されてしまう可能性があります。後になって、「この分は追加で費用が発生します」などと言われてしまっては、比較検討した意味がなくなってしまいます。
「走行期間は●月●日から●月●日まで」
「●●のプロモーションを行いたい」
「荷台には●●の広告物をのせたい」
というように、希望する条件を明確に伝えたうえで見積りをもらい、よく比較検討してから申し込みするようにしましょう。
8-3 広告内容・スケジュールの設定
申し込みを終えたら、制作や走行のスケジュールを設定します。プロモーションを行いたい期間や日時の希望を伝え、事業者側の車体とドライバーを確保してもらうことから始まります。
なお、希望のスケジュールで宣伝活動を行うためには、車体とドライバーの確保がとても重要です。業者の保有するトラックに空きがなければ、いくら期間の希望を伝えても、走行をすることはできなくなってしまいますね。一般的にどの事業者も、見積もりの時点では仮押さえ不可としているケースが多いので、スケジュールには余裕を持って検討を始めてください。
8-4 広告デザイン制作
ここでは、もっとも一般的な、画像やイラスト中心の広告物をのせる場合を紹介します。
まず、広告シートや板のデザインを制作する段階では、発注したアドトラックの事業者によって、対応が異なります。ワンストップですべてを行ってくれる会社には、そのままデザインも依頼すればいいですし、車体のみを取り扱っている会社の場合には、別途ほかにデザインを制作してくれる会社に発注するか、自前で手配する必要があります。
制作の流れですが、デザインの打ち合わせを行ったあと、希望どおりに作ってもらったaiデータを確認し、必要があれば修正の要望などを伝え、再度制作・修正をくりかえし、最終的に「完全データ」を作成します。完全データは、もうこれ以上、修正が必要ない、という段階のデータを呼びます。ここまできたら、実際のシート印刷に移ります。
一般的には2週間ほどで制作を行います。色校正の確認が必要な場合には、もっと期間を要することもあります。デザインをFIXさせるまでには時間がかかることが多いので、はじめから希望を詳細に伝えておき、余裕のあるスケジュール感で制作を進められるといいと思います。
8-5 音源制作
音源の制作も、広告面のデザイン制作と同様、事業者によって対応が異なります。別途制作会社に依頼する必要があるアドトラック会社もあれば、ワンストップで音源制作もふくめて対応してくれる会社も存在します。契約を交わした会社がカバーしている対応範囲を確認しましょう。
なお、アドトラックの走行とともに流すこととなる音源は、一般的には、以下の3種類のうちのいずれかになるでしょう。
- オリジナルの音源
- 著作権フリーの音源
- 著作権を買い取った音源
とくに注意が必要なのは、(3)のケース。たとえば「EXILEを流したい!」という希望がある場合には、著作物になりますので、JASRACまで許可を申請し、費用を支払う必要があります。最終的に使用許可をもらうまでに時間を要するので、スケジュールに注意してください。
音源の規格は、とくに存在しません。自由に作ることが可能です。ただし、アドトラックが歩行者の側を通過するのは、走行スピードにもよりますが、平均で5〜10秒ほどです。わずか数秒で、印象に残るもの、商品・サービスの認知につながるものを制作する必要があります。絶対に伝えたいキーワードなどを絞り、厳選して、確実に人々までプロモーション内容が届くようにクリエイティブを練りましょう。
8-6 走行
デザインや音源が揃い、工場でのシート制作やトラックへの貼り付けが終了すれば、走行できる準備が整います。事前に打ち合わせをした走行スケジュールに従って街中を走ります。
なお、走り方にはテクニックが求められます。制作した広告デザインや音源を、できるだけ多くの歩行者に体感してもらえるよう、基本的にゆっくりとしたスピードで走行したり、信号の前で意図的に停止したりするなど、アドトラックにふさわしい走行方法があります。アドトラックの走行に慣れており、よく訓練されたドライバーをアサインしてもらいましょう。
以上が、問い合わせ・見積もりから実際の走行まで、アドトラック広告を行う場合の流れになります。なお、説明したフローはあくまで一般的な流れですので、依頼する事業者によっては、異なる場合があります。
9 まとめ
いかがでしたか。静的な屋外広告とは一線を画し、人の注目を集めるのに適した「効果のある」屋外広告として、いま業界中で話題を呼んでいるアドトラック。もしご興味があれば、まずは数社に問い合わせをしてみることから、はじめてみてはいかがでしょうか。
本記事を、アドトラック広告を出す際の参考にしていただければ幸いです。
アドトラックでプロモーションされる商品・サービスとして主だったものには以下のようなものがあります。
・テレビ番組(ドラマ・アニメ)
・飲食店
・ファッション
・ウェブサイト
・パチンコ店
・求人媒体
・選挙告知
・音楽コンサート・CD
・映画
・フェス・イベント
広告媒体には向き不向きもあるので、プロモーションしたいものが過去に成功事例があるか確認しておくと間違いがないでしょう。